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漫描雑譚/大人の漫画 [ギャラリー]

当たり前の事なのだが、世の中の暮らし風俗のすべては移り変わって当初の意味合いも風化してゆくものだ。「青春」という言葉のニュアンスさえ現代では移り変わっているのだろう。追いかけてみても無駄な事なのだが、過ぎ去った日々の中に何か大切なものを置き忘れて来たような気になる事がある。それはたぶん間違いなく大切なものなのだが、だからと言って取り返しに戻る訳にはいかない。大切なものだった事に気づいたことが“よく生きた”という証明なのだろう。

幼児期を思い起こしてみれば私の周囲の子供たちは今よりもませていたように思う。「おマセ」という言葉が流行っていたように、大人びた子どもが多かった。大人びたと言うよりは大人に近づこうと背伸びしている子供たちだったように思える。
生活の中の娯楽として漫画とテレビがあり、技術上の未熟さはあっても内容的には決して幼稚ではなかったように覚えている。無邪気ではあったが幼稚ではなかった、こういったコンテンツのあった事が今の若者たちに通じるだろうか?

大人の漫画.jpg

小学校が午前中に終わった日は急いで家に帰ってテレビの昼番組「お笑いタッグマッチ」や「おとなの漫画」を見ていた。まだワイドショーなどが始まる前の時代で、知らず知らずの内に時事問題に接するのはこういった番組があったからだ。
そしてその延長として、普段は少年雑誌の漫画を読んでいる私も時には父親の読み捨てた「漫画読本」を読むことがあった。

中曽根康弘まんが.jpg

そこにはいつもの雑誌漫画とは違った大人の世界の主人公がいた。「フクちゃん」や「おトラさん」「ベビーギャング」といった大人たちの間での人気キャラクターが新鮮に思えたものだ。
ちなみに「おトラさん」は柳家金語楼の当たり役で映画化もされている。

昭和40年代にはアニメにもなってお茶の間の子供たちの人気キャラとなった「サザエさん」も元はと言えば朝日新聞連載の大人向け四コマ漫画で、単行本は貸本屋に並んでいてよく見かけたものだった。

よく考えてみれば、漫画というものは大人たちの間で広まったものだった。江戸時代の「北斎漫画」もあれば、平安時代の「鳥類戯画」は日本の漫画のルーツとも言われている。
「遊びをせんとや生まれけむ」大人こそ戯れの中に真の姿を取り戻すのかも知れない。イギリスやフランスなどでも海外の漫画の多くは大人の人々を読者として想定しているものが多かった。だからフランスのバンド・デシネ(漫画)で有名なメビウス氏(本名:ジャン・ジロー)はアーチストとして認められている。遠藤周作まんが.jpg

大人の漫画という観点からみれば、日本の漫画は独自の発展を遂げて来た。それは日本古来から伝わる日本人の芸術性なのだろう。漢字から発展させてひらがなを生み出してきた技巧的な加工能力は衣食住すべての面で発揮されている。海外から輸入されたものを日本人向けにマッチさせる工夫はずば抜けている様に思う。

話しを大人漫画に戻すと、私が多感な少年だった’60年代は青年漫画が台頭し始めた頃だったが大人漫画もまだ健在の時代だった。小島 功「仙人部落」、富永一郎「チンコロ姉ちゃん」、杉浦幸雄「アトミックのおぼん」etc.

そんな大人漫画の時代だったからこそ『漫画読本』には有名著名人の描いた珍しい作品も残っている。
今では日本政界のドンとなった中曽根康弘氏が総理大臣になる以前の国会議員だった時代に描いた『現代の怪獣 キング・ドゴール』
タカ派で知られていた彼の面目躍如の一枚だ。

「沈黙」の著者で仲代達矢まんが.jpgもある作家・遠藤周作氏はさすがひねりを効かしてウィットに富んだモチーフとタッチで『いじわるなデート』という作品を掲載していた。
クリスチャンでもあり真摯なテーマを小説にしていた彼も、漫画では衣を脱いでくつろいだテイストで取り組んだようだった。


俳優・仲代達矢氏の作品『深夜営業禁止』は全体に何となく彼の生真面目さがうかがえる様に思うのだがどうだろう。
漫画と言えども手を抜かずに一生懸命描いている姿を想像してしまう作品だ。表面には出ていないが社会正義を信条とする彼の生き方の一部を垣間見る気がする。

今ではすっかり忘れ去られている様子の“大人の漫画”というジャンルだが、ユーモアを理解する大人のセンス・バロメーターとして本来ならもう少し受け入れられていても良さそうなものだと思う。


漫画読本.jpg


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コメント 3

いっぷく

私は「おとなの漫画」より少し後の世代なのです。
クレージーはその後、同じような内容で70年代に「クレージーの待ッテマシタ」「クレージーの奥さ~ん!」という5分番組をやってましたが、時代も変わり、またクレージー自体がすでに60年代の全盛期を過ぎていて、メンバーも個々の活動が増えて欠演も多かったので盛り上がることはありませんでした。
クレージーからドリフへ、という「60年代」から「70年代」の移行は、確実に文化も変わっていったのですね。
by いっぷく (2017-11-26 18:25) 

don

中曽根さんマンガ描いてたんですね。
1枚だけのものでしょうか?
by don (2017-11-26 19:11) 

扶侶夢

>いっぷくさん、don さん、ご来訪&コメント有難うございます。

クレージーからドリフへ、というのはまさに「60年代~70年代移行」の象徴ですね。ギャグの発想からスタイルに至るまでガラッと変わりますからね。余談ですが70年代初めは巨泉・前武の「ゲバゲバ90分」が異色でしたが、ここにはまだハナ肇が「タメゴロー」で健在でしたね。

中曽根さんの漫画は後にも先にもこれ一枚っ切り、貴重な作品だと思います。後、田中角栄氏のもあったのですが…紛失しました(残念)
by 扶侶夢 (2017-11-28 00:41) 

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